防災協定は、企業定着の切り札─文京区がドローン企業を“つなぎ止める”理由
- Lucky
- 1月27日
- 読了時間: 3分
ブルーイノベーションが、文京区および日本UAS産業振興協議会(JUIDA)と締結した「災害時等におけるドローンによる支援活動に関する協定」。
表向きは、防災・減災を目的とした自治体施策です。
しかし少し引いて見れば、この協定の本質は防災そのものではありません。
文京区にとってこれは、企業を呼び込み、そして外に出さないための戦略だと読む方が実態に近いでしょう。
都市部の自治体にとって、補助金や税制優遇による企業誘致は万能ではありません。
防災協定という名の、企業誘致戦略
文京区のように大規模用地を持たず、製造拠点も集めにくいエリアでは、価格競争で勝つことは難しい。
その代わりに強みとなるのが、行政との距離の近さと意思決定の速さ、そして社会実装まで踏み込める環境です。
今回の防災協定は、そうした強みを制度として可視化したものだと言えます。
防災協定という形を取ることで、文京区は「実証で終わらせず、有事を想定した運用まで行政が関与する」という明確なメッセージを発信しています。
これは、社会実装が前提となるドローンやロボティクス分野の企業にとって、極めて強い誘因になります。

防災はもうからない。だからこそ行政主導が効く
一方で、防災はビジネスとしては決してもうかる分野ではありません。
発災頻度は読めず、継続収益を描きにくく、成果も数値化しづらい。
だからこそ自治体が最初の顧客となり、「やっていい場所」を用意する意味があります。
文京区は、防災協定を通じて企業側の初期リスクを下げにいっているのです。
協定の中心に立つブルーイノベーションは、すでに災害対応の運用実績を持つ企業です。
文京区に拠点を構え、JUIDAも同区内にあるという地理的な近さは、発災直後に動ける体制をつくるうえで大きな意味を持ちます。
自治体にとって、こうした存在は簡単に手放せるものではありません。
JUIDAの立ち位置が生む、評価の分かれ目
ただし、この構図は評価が分かれる部分でもあります。
業界内では、JUIDAの運営実態がブルーイノベーションと強く結びついていると認識されており、その点を快く思わない声があるのも事実です。
業界団体を介することで公共性を担保する狙いがある一方、枠組みが固定化され、閉じたエコシステムに見えるリスクも孕みます。
それでも文京区がこの形を選んだのは、防災という失敗できない分野において、理想的な公平性よりも実装の確実性を優先したからでしょう。
すでに動ける主体があり、説明コストが低く、有事対応を任せられる。その現実を取った判断です。

防災を絡めて企業を定着させる、極めて現実的な都市戦略
この協定の真価は、横展開ではなく「定着」にあります。
技術と人材、そして実装実績をエリアに縛り留めるための政策ツールとして、防災協定が使われている。
補助金をばらまかず、予算も使わず、派手な誘致策も掲げない。
それでも「ここでやる意味」を作りゆるーく抱え込む。
文京区のこのやり方は、都市型自治体にとって一つの完成形と言えるのかもしれません。
ここ、押さえておきたいところです。




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