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もがき苦しむドローン企業たち、なぜこうまで苦しいのか

  • 2月15日
  • 読了時間: 5分

ブルーイノベーションとACSLの2025年度決算が発表されました。


まず、特に気になったブルーイノベーション。



売上高は10.5億円。

これは期初計画に対して約3割未達、予定の2/3水準にとどまりました。

前年から見ても大幅な減収です。


営業損失は拡大し、純損失も膨らみました。

そして、それに伴い取締役の報酬返上も発表されています。


相当に厳しい内容ですが、率直に言えば、今回の決算内容は決して驚きではありません。


ブルーイノベーションだけが苦しいわけではなく、

日本のドローン専業企業の多くが、似たような壁に直面しています。


案件は増えています。実証実験も拡大しています。

国の予算も動いています。


しかし、「安定収益」にはなっていないのです。


ここが最も厳しい現実です。



なぜ売上が積み上がらないのか


最大の問題は、収益の再現性にあります。


自治体案件は単年度予算で動きます。

翌年も同じ規模で発注される保証はありません。


民間インフラ企業も、まずはPoCから入り、本格導入は慎重になります。


さらに、日本市場では案件ごとの個別カスタムが常態化しています。

フルカスタム対応は技術力の証明にはなりますが、再現性のあるモデルにはなりません。


その間に、機体そのものはDJIが価格を下げ、Skydioが自動化を進めています。

ハードウェアは急速にコモディティ化しています。


つまり、日本の各社はそのすべてが、

「技術は評価されるが、利益構造が成立しにくい」という位置に立っているのです。





下水道は巨大市場、しかし本当に追い風なのか


ブルーイノベーションの決算で最も注目されるテーマの一つは、下水道です。


八潮市の陥没事故を契機に、全国特別重点調査が決定されました。


約5,000kmの管路点検、予算も99億円規模とされています。


テーマとしては非常に強い。現場実証も増えています。


ELIOSによる調査、自治体連携、業界団体との協働。


動きは確実にあります。


しかし、ここで冷静に見る必要があります。


下水道市場は巨大ですが、構造は極めて厳しいのです。


まず、発注主体は自治体です。


単年度予算です。価格は入札で決まります。


しかも、長年にわたり現場を担ってきた従来の調査業者が強固なポジションを築いています。

簡単に入り込める市場ではありません。


そのうえで、

ドローンはあくまで点検手段の「代替」に過ぎません。


もともと十分な予算が割かれているわけではない領域に対して、

別の方法を提示しているに過ぎないのです。


したがって、作業単価を劇的に引き上げることは現実的ではありません。


むしろ、

「効率化できるのなら安くできるはずだ」というコストダウン圧力が強く働きます。


つまり、市場規模は大きいが、利益率は高くなりにくい。

現状のPoCも相当の赤字で実施しているのでしょう。

そうしなければ狭小ドローンを標榜する他社に依頼が行ってしまうことも明白です。


テーマは強いが、構造は簡単ではない。

ここを見誤ると、「市場はあるのに儲からない」という状況が続きます。




助成金が市場を歪めている


もう一つの構造的問題は、助成金です。


補助金や助成金は確かに産業立ち上げには必要です。

しかし長期化すると市場を歪めます。


企業は顧客から対価を得るよりも、 助成金を獲得することに注力しがちの自転車操業になってしまいます。


ドローン企業各社すでにどっぷりです。

顧客側も補助金前提で導入判断をします。

補助がなければ導入しないとなれば、結果として、「自立した市場価格」が形成されません。


さらに、価格競争が過度に進みます

助成金ありきで安値受注が常態化し、利益を削ります。


これはブルーイノベーション固有の問題ではなく、日本の産業全体の構造問題です。


補助金や助成金は産業を育てる一方で、自立を遅らせて市場を破壊する悪影響も大きい。




ドローンポートは本当に市場になるのか


同社が注力するドローンポートも同様です。

理論は正しい。将来は必要になる可能性が高い。


しかし現時点では、平時の収益モデルが弱い。

防災は発生頻度が低く、物流は採算が難しく、監視は単価が小さい。


一方で、DJIやSkydioは既に非常に高性能なDock型ソリューションを展開しています。

技術面でも価格面でもグローバル標準と競争にすらなっていません。


ちなみにここに国が資金を入れる理由は明確です。

中国依存回避、空のインフラ化、地方インフラ自動化。これは国家戦略です。


しかし企業としては、国家戦略と民間収益モデルの間に立たされてしまっているのですね。




ACSLとの違い


同タイミングに決算発表したACSLも観てみましょう、こっちも大分苦しい。 売上は昨年対比ほぼスライドで赤字額は縮小したものの、

相変わらず売上規模に見合わない巨額の損失を継続しています。

本来ならば市場からの退出を求められるべきレベルの数字が並んでいます。



ただし、資料を見てわかるのは、こちらは安全保障領域へ明確に進んでいるという事。


防衛省案件、セキュア市場、国家調達。

顧客が国家であるモデルです。


ブルーイノベーションは民需×官需の社会インフラ型。ACSLは安全保障型。


前者は市場で勝たなければならないし、後者は国家予算を取りに行く。


このビジネスモデルの差は面白いですね。




業界は淘汰・統合フェーズに入った


日本のドローン産業は、実証フェーズから淘汰・統合フェーズへ移行しつつあります。


技術があるだけでは足りません。

テーマが強いだけでも足りません。


下水道があっても、ポートがあっても、補助金があっても、 最終的には「儲かる構造」を作れた企業だけが残ります。


レベル4が本格商業化するのか。

自治体が恒常予算化するのか。

安全保障枠がどこまで拡大するのか。


この数年で答えが出ます。


正直に申し上げると、今はかなり厳しい局面です。


そして、この段階に来てなお、助成金や補助金に依存し続けることは、むしろ健全とは言えません。

本当の意味で助成金に頼らない再現性のある収益構造を構築できた企業だけが、次のステージへ進みます。 そのためには、行政サイドからの淘汰・統合を積極的に進めるアクションも求められています。


ここ、押さえておきたいところです。

3件のコメント


ゲスト
2月15日

経産省の罪深いな

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ゲスト
2月15日

希望あるのはリベラウェアだけだな。

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ゲスト
2月15日

その通りだ

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