top of page

世界のドローン潮流、モード1? モード2?―FPVレースから考える操縦の標準

10月4日
読了時間: 7分

ドローンを習い始めると、最初に出会う選択肢の一つが「モード1か、モード2か」である。上昇・下降を右手で操作するのか、左手で操作するのか。経験者にとっては身体に染みついた違いであり、初心者にとっては、その後の操縦習慣を左右する選択になる。


しかし、この問題を単なる好みで片づけると、世界のドローン産業がどこへ向かっているのかを見落としてしまう。中国のDJIも米国のSkydioも、代表的な製品の標準設定にモード2を採用している。FPVレース向けの送信機にも同じ傾向が見える。その一方で、手首の動きやパソコンから飛ばす操作方法も実用化されている。


日本のドローン教育や機体導入は、こうした変化をどこまで前提にしているだろうか。操作配置の違いから、操縦者と機械の役割を考えてみたい。



モード1とモード2は、何が違うのか


モード1とモード2は、二本のスティックへの操作の割り当てを指す。機体の性能や自律性の段階を表すものではなく、「ノーマル」「スポーツ」、あるいは後述する「Acro」といった飛行制御の方式とも別の話だ。


モード1:左スティックの上下が前進・後退、左右が機首の旋回。右スティックの上下が上昇・下降、左右が横方向への移動。


モード2:左スティックの上下が上昇・下降、左右が機首の旋回。右スティックの上下が前進・後退、左右が横方向への移動。


これは一般的な安定化されたカメラドローンの動きに置き換えた説明である。操作軸の名前でいえば、上下入力に割り当てるスロットルとピッチが左右で入れ替わる。ロールは右、ヨーは左という配置は共通だ。モード2ではピッチとロールが右手にまとまり、モード1では両手に分かれる。


プロポのモード1・モード2の比較図。モード1は右スティックで上昇下降、左で前後移動。モード2は左で上昇下降、右で前後移動。旋回は左、横移動は右で共通。

DJIとSkydioが採用する、共通の出発点


DJI RC 2の公式マニュアルは、標準の操作設定をモード2と明記している。モード1やモード3、カスタム設定も利用できるが、説明の基準はモード2だ。Skydio X10の公式マニュアルも、標準設定をモード2としている。中国と米国の二社が、異なる用途に向けた製品で同じ配置を初期設定にしている点は注目に値する。


ただし、出荷時の設定と利用者が実際に選ぶ配置は別である。今回確認した一次資料から、世界の操縦者の何割がモード2なのかまでは判断できない。それでも、主要メーカーがどの配置を基準に製品や教材をつくっているかは分かる。海外製品の導入を考える際、モード2を理解しておく実務上の意味は小さくない。



ドローンレーサーの世界にも、モード2を軸にした製品環境がある


では、機体を最も積極的に操るFPVレースの世界はどうか。ここでも手掛かりになるのは、競技人口の推測ではなく、実際の機材と練習環境である。


FPV向け送信機TBS MAMBOの公式マニュアルは、初期設定をモード2とし、これを最も一般的に使われる配置と説明している。同時に、モードを変更する方法も案内している。これはメーカーによる説明であり、世界大会の出場選手を集計した統計ではない。しかし、FPVの製品設計がどの利用者像を出発点にしているかを示す一次資料にはなる。


練習環境も一律ではない。ドローンレース用シミュレーターLiftoffは、PlayStation 4/Xbox One版の2020年12月の公式更新情報で、モード1の選択肢を追加し、Acroのチュートリアル説明もモード1/2に対応させたと発表している。少なくとも「FPVレースはモード2でしか成立しない」という理解は正しくない。


これらから読み取れるのは、モード2がFPVの機材・学習環境でも重要な基準になっている一方、別の配置を選ぶ余地もあるということだ。今回確認した資料だけで、トップレーサー全員の配置やモード別の成績差までは断定できない。新しく始める人が教材や機材との合わせやすさからモード2を選ぶことと、熟練者に配置変更を求めることは、分けて考えたい。



同じモード2でも、空撮機とレーサーは操っているものが違う


レースを加えて考える際、最も重要なのはここである。カメラドローンの安定化された飛行では、スティックを戻すと機体が減速し、条件が整えばその場で停止・位置保持する。一方、FPVで使われるAcro/Rate方式では、ピッチ・ロール・ヨーの入力は各軸の回転速度を指示する。


Betaflightの公式資料によれば、Rateモードではピッチとロールのスティックを中央に戻しても、自動で水平には戻らない。操縦者は機体の姿勢とスロットルを組み合わせ、コースに沿う軌道をつくる。スロットルも単純な高度の指令ではなく、推力の操作として考える必要がある。


つまり、同じモード2の送信機を握っていても、空撮機の位置を動かす感覚と、Acroで機体の回転や推力を扱う感覚は同じではない。「モード2を覚えたからレーサーも飛ばせる」とはならないし、Acroをモード2の別名として説明してもいけない。


競技では、入力に対する回転速度やスティック中央付近の感度も重要になる。Betaflightは、こうした応答を調整するRatesやExpoを用意している。配置だけそろえても、入力への反応が違えば操縦感覚は変わる。「何モードか」は操縦環境の一部分であり、練習で身につけた感覚と実機の応答を一致させることまで含めて考えるべきだ。



日本の慣習を、新しく学ぶ人にどう伝えるか


モード1は日本のラジコン文化と結びつけて語られる。DJIの開発者向け資料にも、モード1を「Japanese」、モード2を「American」と呼ぶ表記がある。ただし、この呼び名は現在の国別普及率を示すものではない。


長年モード1で飛ばしてきた操縦者にとって、その配置は技能の土台である。慣れた操作を無理に変えることが、安全性や生産性の向上につながるとは限らない。一方、初めて学ぶ人には、今後使う機体、教材、職場の運用に合う配置を選べるようにする必要がある。「指導者が昔から使っているから」だけでは、選択の説明として足りない。


本稿の立場は、新しくドローンを導入する組織や、これから空撮とFPVの両方に触れたい人は、モード2を標準候補として検討するのが合理的だというものだ。主要製品の初期設定とそろえることで、教材や機材を導入する際の読み替えを減らせる可能性がある。ただし、既存の技能や保有機材との整合性を含めて判断すべきである。



レーサーの技能を伸ばす教育と、業務を広げる教育


レースでは、個人が機体の応答を理解し、反復練習で限界に近い操作を磨くことに価値がある。業務では、それに加えて、担当者が交代しても同じ仕事を再現できることが重要になる。求める成果が違えば、教育の重点も違ってよい。


例えば点検チームが送信機を共有する場合、前の担当者が操作配置を変更し、次の担当者が知らなければ、上昇させるつもりの入力が前進になる可能性がある。必要なのは、配置の優劣を争うことより、チームの標準を決め、設定変更と引き継ぎを管理することだ。教育用機と業務用機の配置や応答を把握し、例外を共有できるようにする。


機体を増やしても、特定の操縦者にしか任せられなければ業務は広がりにくい。レースで培う高度な手動操縦を尊重しつつ、産業利用では設定管理、状況判断、自動飛行への介入を含む別の熟練も評価していく必要がある。



世界は、二本のスティック以外の操作にも進んでいる


DJI RC Motion 3は、対応機体とゴーグルを組み合わせ、手首の動きなどで飛行を操作する製品だ。SkydioのRemote Flight Deckでは、マウス、キーボード、ゲームコントローラーを使った遠隔操縦が用意されている。現場で専用送信機を握る以外の操作環境も、すでに選択肢になっている。


これは、レースのように人が操ること自体を楽しみ、競う世界がなくなるという話ではない。手動操縦を突き詰める領域と、機械に任せられる範囲を広げる領域が並行して進んでいるのである。ドローン教育には、その両方を見渡せる視点が必要だ。



モードの選択には、産業としての姿勢が表れる


モード1を使うこと自体が遅れているわけではない。モード2に切り替えただけで、運用が高度化するわけでもない。問われるのは、なぜその操作体系を選び、誰が使い、どの機体や仕事につなげるのかを説明できるかどうかである。


新しく学ぶ人には、世界の製品や練習環境を踏まえて選択肢を示す。経験者には、蓄積した技能を尊重しながら、新しい操作環境を理解する機会を用意する。組織では、担当者が交代しても確実に業務を引き継げるようにする。


モード1か、モード2か。その小さな選択には、指導者の慣習を引き継ぐだけでよいのか、利用者と仕事に合わせて操作を設計するのかという問いがある。日本のドローン産業が育てるべきなのは、巧みに飛ばせる人材と、多くの人が迷わず使える運用環境の両方だ。


資料確認:2026年10月4日。メーカーの標準設定と利用者の普及率は区別して記述しています。アイキャッチはAI生成の概念イメージです。


コメント


bottom of page