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同じ形でも中身は違う―DJI・Skydioの進化と国産ドローンが問われる実力

10月4日
読了時間: 8分

「国産ドローンを作る」と言っても、何を実現する機体なのかで意味は大きく変わる。四つのプロペラとカメラを備えた外観が似ていても、人がすべてを判断して飛ばす機体と、機体側が周囲を認識して飛行を支援する機体は同じではない。DJIやSkydioが認識と自律化を競う今、国内で機体を製造できることだけを競争力の証しにしてよいのか。実際の市販機から、その隔たりを考える。


ただし、ドローンの技術は一つの順序で進化してきたわけではない。初代PhantomはすでにGPSを搭載し、2016年のMavic Proには障害物回避や被写体追従があった。新機種ほど、すべての機能が上位になるわけでもない。本稿では歴代の市販機と現在の製品を、重なり合う5つの技術に分けて整理する。


市販ドローンを飛行制御、障害物検知、LiDAR、自動撮影、FPVと360度撮影の5つの技術で整理した図。AI生成の概念図。

1.安定して飛ぶ――Phantomが下げた「飛行」のハードル


マルチコプターは、複数のモーターの回転を調整して姿勢を保つ。その土台となるのが、角速度や加速度を測るIMU、気圧による高度推定、GNSSによる位置情報などだ。センサーの役割は同じではない。姿勢を保つこと、高度を保つこと、地上の同じ場所にとどまることを組み合わせて、扱いやすい飛行をつくっている。


DJIが2013年に発表した初代Phantomは、GPSによる自動操縦機能を備えた完成品として登場した。初期の市販機でも、姿勢制御とGPSによる位置保持は組み合わされていた。意義は、飛行制御をユーザーが一から組み上げる負担を減らし、空撮へ関心を向けやすくしたことにある。




2.周囲を見て避ける――Mavic ProからMini 4 Proへ


位置が分かっても、その進路に木や壁があるかまでは分からない。ビジョンセンサーは、周囲の画像から障害物や機体の動きを捉え、飛行を支援する。2016年のMavic Proは折り畳み機構だけでなく、複数のカメラなどを使うFlightAutonomy、ActiveTrack、OcuSyncによる映像伝送を組み合わせていた。携帯性と認識・撮影支援が同時に進んだ製品だった。


Mini 4 Proでは全方向のビジョンセンシングと底面の3D赤外線センサーが採用されている。ここでいう「全方向」は、障害物を検知する方向の話であり、360度映像を記録できるという意味ではない。また、同機を前方LiDAR搭載機として扱うのも誤りだ。センサーの種類と撮影機能は分けて読む必要がある。




3.認識できる条件を広げる――Air 3S、Mini 5 Proの前方LiDAR


ビジョンによる認識は、明るさや対象物の模様などの条件に左右される。その弱点を補う方向の進化が、Air 3SやMini 5 Proに搭載される前方LiDARだ。自ら光を出し、戻ってきた信号を使って対象を検知することで、低照度環境での飛行・帰還支援にも役立てる。


重要なのは「LiDARを積んだので完全自律になった」という理解ではない。前方の検知を補うことと、あらゆる方向・条件で安全を保証することは別である。作動する飛行モードや検知範囲にも制約がある。また、この種の障害物検知用LiDARを、測量用の点群を取得するレーザースキャナーと同一視すべきではない。進化の本質は、飛行支援が成立する条件を広げることにある。




4.撮影を任せる――Neo 2で変わる「指示」の単位


DJI Neo 2は、手のひらからの離着陸、被写体追従、ジェスチャーによる操作などを組み合わせる。スマートフォン経由の音声操作にも対応する。操縦桿で機体の動きを逐一指定するだけでなく、「自分を追って撮る」という撮影目的を簡単な操作で伝える方向が見えてくる。


ここで新しいのは追従そのものではない。Mavic ProにもActiveTrackは存在した。変化は、撮影を開始するまでの準備と操作が短くなり、撮られる人が撮影者も兼ねやすくなることだ。家族旅行やスポーツの記録では、飛行性能の小さな差より「使いたい瞬間に撮り始められるか」が利用頻度を左右する。


ただし、ジェスチャーや音声は指示を入力する方法であり、それ自体が高度な自律判断を意味するわけではない。入力の簡単さ、被写体認識、経路制御、障害物回避は別々の要素であり、製品はそれらを組み合わせて体験をつくっている。




5.視点を自由にする―Avata 2と360度ドローンは何が違うか


DJI Avata 2は、ゴーグルとモーションコントローラーによって飛行への没入感を重視する機体だ。しかし、DJIの公式FAQは障害物回避機能を搭載しないと明記している。下方・後方の視覚センサーによる位置保持支援は、障害物回避と同じではない。没入感が進んだ製品を、認識・安全支援の最上位に置くことはできない。



一方、DJI Avata 360とAntigravity A1は、2026年10月時点で公式販売ページを確認できる360度撮影ドローンだ。将来のコンセプト機として扱う段階ではない。周囲を記録して撮影後に画角を選び直せるため、飛行中に機体の進行方向と最終的な構図を完全に一致させる必要が薄れる。A1ではゴーグルで頭を動かして見回す体験も提供される。


これは、飛行中にフレームを決め切る撮影から、空間を記録して後で映像を切り出す撮影への変化といえる。ただし、360度記録、ゴーグルへの映像表示、全方向の障害物検知はそれぞれ別の機能だ。Avata 360も、障害物検知の対応方向などが撮影モードによって変わる。機種名に「360」があっても、すべての機能が常時全方向になるわけではない。



同じ形でも中身は違う―DJIとSkydioが競う領域


四つのプロペラがあり、カメラを積み、空を飛ぶ。外から見れば似ていても、ドローンの中身は同じではない。人が周囲を見て危険を判断し、細かく操縦して成立する機体と、機体側が周囲を認識して回避や追従を支援する機体では、人に残される仕事の量が違う。この差は、外観や飛行時間だけを並べた仕様表では見えにくい。


中国のDJIについては、前述の全方向ビジョン、前方LiDAR、被写体追従が具体例になる。米国のSkydioも、X10で機上の計算処理とAIによる飛行支援・障害物回避を製品化している。NightSenseのアタッチメントと追加ソフトウェアを用いれば、夜間にも視覚ナビゲーションと障害物回避を利用できる。両社の方式は同一ではないが、競争の焦点が「安定して飛ばす」から「周囲を認識し、操縦者の判断と操作を支える」段階へ移っていることは読み取れる。



両社の代表機は、安定飛行を土台に、空間認識と自律的な飛行支援を製品価値として競う段階にある、というのが本稿の評価だ。その実力はLiDARの有無だけでは決まらない。周囲をどう認識し、どの条件で、どこまで操縦者の判断や操作を支援できるかが重要になる。また、FPVや360度撮影は体験や撮影の自由度を広げる技術であり、自律飛行能力とは分けて評価する必要がある。



国産化の目標を「飛ぶ機体を作る」で止めてはいけない


この現在地を踏まえれば、これから国産ドローンを開発する際に、姿勢を安定させる、GNSSで位置を保つ、指示された経路を飛ぶ、といった基礎機能だけを到達目標にするのでは、汎用的な点検・撮影市場で先行勢に対抗するには足りない。基礎的な飛行機能を再現したことと、現在の市場で競争できることは別なのである。


問題は「国産だから性能が低い」ということではない。本稿は国産機全体を調査して一律に格付けするものでもない。問うているのは開発の目標設定だ。機体を国内で組み立てることを成果の中心に置き、認識、経路判断、撮影の自動化、運用ソフトウェアを後回しにすれば、外形は追いついても利用者が体験する差は残る。


センサーを追加するだけでも、この差は埋まらない。得られた情報を統合して機体の状態と周囲を推定し、必要な処理を機上で実行し、飛行制御につなげる。そのうえで、暗所、逆光、狭い場所、通信状態の変化など、想定する現場条件で性能を検証する必要がある。機体、計算機、ソフトウェア、試験の蓄積を一つの製品として成立させることが問われる。



支援・調達で問うべきは、国籍に加えて「何人で、どこまでできるか」


国産化には、供給の継続性、保守、データ管理、特殊な現場への適合といった意義がある。特定の任務では、軽量性、耐環境性、搭載能力を優先し、高度な自律機能をあえて求めない設計も合理的だ。しかし、その価値と認識・自律飛行の技術水準は分けて評価しなければならない。「国産である」という説明だけで、運用上の差まで解消したことにはならない。


開発支援や調達の評価では、飛行できたかに加えて、同じ任務を何人で実施できるか、どれだけ訓練が必要か、途中で何回介入するか、どの条件まで任務を完遂できるかを確認したい。点検であれば、撮影の抜けや再飛行、成果物の作成に要する時間も重要になる。機体単価だけでなく、一つの仕事を終えるまでの総費用で比べるべきだ。


DIIJとしての結論は明確だ。世界の先行企業が認識と自律化を製品価値にしている以上、国産開発の目標を「飛ぶ機体を作った」で止めてはならない。同じ形のドローンを作ることと、同じ水準の仕事を任せられることは違う。国産化を産業の競争力につなげるには、どの任務で、どの機能を、どの運用成果まで実現するのかを具体的に示す必要がある。


※2026年10月4日時点のメーカー公開情報に基づく。Phantom、Mavic Proなどの歴代モデルを含み、全機種の現行販売・国内在庫を示すものではない。図はDIIJによる機能別の整理で、メーカー共通の世代分類ではない。図中のイラストは技術の概念を示すAI生成画像であり、実機写真ではない。


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