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のしかかるSBIR 先端ドローン企業はもうからないの?

  • 2 日前
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のしかかるSBIR 先端ドローン企業はもうからないの?

小型ドローンを使ったインフラ点検やデジタルツイン関連サービスを展開するLiberawareの決算では、売上成長の一方で、収益化の難しさが改めて浮かび上がりました。



同社の2026年7月期第3四半期累計の売上高は12.16億円、売上総利益は5.13億円でした。前年同期比では売上高が24%増、売上総利益が12%増となっており、表面的には成長が続いています。


しかし、経常損益は13.48億円の赤字です。さらに、会社が開示している「SBIR研究開発費と補助金収入を除く経常損益」でも、4.55億円の赤字となっています。


つまり、赤字の原因はSBIRの会計処理だけではありません。SBIRを除いた基礎収益力の段階でも、まだ固定費を吸収できていないのです。



売上は伸びてるが、儲からない


問題は、売上の伸びがそのまま利益に転化していない点にあります。


第3四半期累計の売上総利益率は42%でした。前期n同期間の46%から4ポイント低下しています。会社は低粗利案件の影響を一時的なものと説明していますが、売上高が24%増えたのに対し、売上総利益の伸びは12%にとどまりました。


売上の質が一時的に悪化していることは、少なくとも今期の損益には明確に表れています。


加えて、費用構造が重くなっています。研究開発費を除く販管費は第3四半期累計で7.24億円です。これに対して、売上総利益は5.13億円にすぎません。


つまり、通常の販管費だけでも粗利で賄えていない状態です。


さらに、補助金対象外の研究開発費も2.40億円あります。これを含めると、SBIRを除いた事業運営コストは9.64億円となります。売上総利益との差は約4.5億円に広がり、これは会社が開示した「SBIR研究開発費と補助金収入を除く経常損益」4.55億円の赤字とほぼ一致します。


会社自身も、SBIR研究開発費を除く営業損益について、売上高規模に対して固定費を吸収できず、損失が拡大したと説明しています。


ここに、同社がまだ儲からない最大の理由があります。



粗利で固定費を吸収できないの?

第一に、売上規模がまだ足りません。


同社の事業は、ドローン機体の販売、点検・調査、データ処理、デジタルツイン、受託開発などを組み合わせたインフラDX型のモデルです。技術力や導入実績は評価されていますが、現在の売上水準では、人員、営業、開発体制を支えるだけの粗利が出ていません。


第二に、リカーリング収益の積み上がりが弱い点があります。


会社は、リカーリング収益に関するKPIについて、大きな動きはなく、リカーリング収益額の積み上がりは限定的だと説明しています。点検・データ処理サービスのリピート率は前年同期並みですが、小型案件のリピートが多く、金額面での貢献が乏しいという状況です。継続利用はあっても、固定費を吸収するほどの反復収益にはまだ育っていません。


第三に、戦略的な無償対応が通常案件を圧迫しています。


今期は下水道領域での標準化を狙い、無償の下水道調査や自治体向けドローンデモにリソースを配分しました。その結果、通常案件の小型化や案件数の減少が起き、上期の進捗が遅れました。受注は第3四半期から回復基調とされていますが、通期では当初予想を下回る見込みとなっています。


第四に、新規領域の売上化が遅れています。


ソリューション開発事業では、前年度からの継続案件が多くを占める一方、新規案件へのリソース配分が十分にできませんでした。新プロダクトや海外領域も、当初想定していた売上計上時期が後ろ倒しになっています。会社は通期売上予想を22.2億円から17億〜19億円へ下方修正しました。



先行する固定費の増加が圧迫要因


販管費は、2025年7月期後半から増加基調に入っています。


会社はその理由として、ビジネスサイドの人員増、自治体往訪、海外市場開拓、採用教育費、広告宣伝費、旅費交通費などを挙げています。さらに、販管費全般について、固定費的要素が強いと説明しています。


ここで重要なのは、費用が売上に先行していることです。


会社は次の成長段階に向けて、人員体制の強化や営業活動の拡大を進めています。しかし、それに見合う売上総利益がまだ出ていません。


成長投資としては自然な動きです。ただし、投資回収が遅れれば、固定費だけが先に重くなります。



SBIRは追い風か、重荷か


同社の決算を読み解くうえで、SBIRは避けて通れません。


SBIRは、スタートアップなどの研究開発と社会実装を支援する制度です。同社は鉄道、建設、災害・インフラ領域などで大規模な国家プロジェクトを進めています。会社資料では、国家プロジェクトの補助金合計は57億円と示されています。


SBIRは、研究開発を加速する強力な資金源です。実際、2026年7月期第3四半期累計の研究開発費PL計上額は17.58億円に達しています。このうち補助金対象外の研究開発費は2.40億円であり、残りの大部分はSBIRなど補助金対象の研究開発費とみられます。


ただし、現行のSBIRにはタイミングの問題があります。


研究開発費は先に発生し、補助金は後から入ります。今期も、鉄道施設点検に関するSBIRで7.98億円、建設施工・災害情報収集に関するSBIRで1.14億円、合計9.12億円の補助金申請が審査中です。補助金額決定後に営業外収益として計上される予定とされています。


この構造では、損益もキャッシュフローも大きく振れます。費用が先行する局面では赤字が膨らみ、補助金が入る局面では経常損益が改善します。


しかし、補助金は本業の粗利ではありません。


補助金によって研究開発費が補填されても、商用売上が十分に立ち上がらなければ、恒常的な収益力は証明されません。



「支えるSBIR」から「のしかかるSBIR」へ


SBIRの本質的なリスクは、補助金がある間ではなく、補助金で作った体制が商用売上に変わらなかった場合に表面化します。


建設施工進捗管理支援サービスは、SBIRを通じて開発され、2026年7月1日から正式提供が始まります。対象事業は2026年6月まで、交付額の上限は4.7億円とされています。


つまり、ここからは研究開発プロジェクトではなく、商用サービスとして顧客から売上を取れるかが問われる段階に入ります。


鉄道向けのProject SPARROWも、鉄道施設の維持管理効率化・省力化を目的とした大規模SBIRです。補助金交付決定額は52億円とされており、会社資料では、2028年4月の事業開始に向けて量産試作機フェーズにあると説明されています。


これらのプロジェクトが商用化に成功すれば、SBIRは大きな成長投資になります。


しかし、商用化が遅れたり、顧客単価が伸びなかったり、継続収益化が進まなかったりすれば、SBIRで拡張した人員、開発体制、営業体制が固定費として残ります。


これが「のしかかるSBIR」です。



下方修正が示すもの


今回の業績予想修正では、売上高が22.2億円から17億〜19億円へ引き下げられました。


一方で、営業損失予想は前回の24.12億円赤字から21.54億〜23.11億円赤字へ、見かけ上は改善しています。ただし、その理由には注意が必要です。


営業損失が改善して見えるのは、SBIR研究開発費の一部が来期に回ることで、今期の研究開発費が減るためです。


経常損益については、SBIR研究開発費の発生時期が後ろ倒しになったことで、一部の補助金収入の受領も来期に回る見込みとなり、前回予想を下回ると説明されています。


費用と補助金収入のタイミングがずれるだけで、損益見通しが大きく変動する構造がここにも表れています。



問われるSBIR後の粗利


儲からない理由は、需要がないからではありません。


インフラ老朽化、下水道、鉄道、建設DX、原発、災害対応といった対象市場には、社会的な必要性があります。会社も顧客数や大手企業との取引実績を積み上げています。


しかし、社会的必要性と企業収益は別物です。


現在の課題は、実証、無償デモ、小型案件、受託開発、補助金プロジェクトを、固定費を吸収できるだけの高粗利・継続収益に変換できていないことにあります。SBIRは研究開発を支える一方で、事業化が遅れれば、増えた人員と開発体制を背負うことになります。


決算で見るべき核心は、SBIRがあるかどうかではありません。SBIRの先に、粗利で固定費を賄える商用事業が立ち上がるかどうかです。現時点の決算は、その答えがまだ出ていないことを示しています。 ここ押さえておきたいところです。

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