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西之島のドローン調査は、何がすごいのかー船から飛び立ち、火山の内側まで探る技術

2 日前
読了時間: 6分

海に浮かぶ黒い島。火口から立ち上る噴煙と、その周囲に広がる溶岩の大地。西之島の空撮映像には、地球が動いていることを実感させる迫力があります。


ただ、ドローン産業の視点で見ると、映像の背後にも注目したいものがあります。揺れる船から機体を送り出す技術、離れた場所から操縦を引き継ぐ仕組み、そして写真や磁気、採取した試料を科学的な知見につなげる仕事です。


西之島では、ドローンが「飛ぶカメラ」から、研究者の目や手、観測装置を現地へ届ける道具へと広がっています。



揺れる船を、空の調査基地にする


西之島の調査では、島への接近や上陸が制約されるため、海上の船が重要な運用拠点になります。


船上発着には、陸上とは違う難しさがあります。甲板は上下に揺れ、傾き、船そのものも移動します。飛行を終えて戻ってきた機体は、その甲板へ着陸しなければなりません。


この運用を大きく進めたのが、2025年3月に行われた調査です。JAMSTEC、名古屋大学、JDRONE、テラテクニカのチームは、研究船「かいめい」から無人ヘリコプター「YAMAHA FAZER R G2」を発着させ、福島県南相馬から衛星通信で遠隔操縦しました。島と周辺海域を含む約4km×6kmの範囲で、磁気分布の観測に成功しています。JAMSTECの発表


運用では、船上の担当者が離陸させ、上昇後に陸上班へ操縦を引き継ぎ、着陸時には再び船上班へ戻しました。現地の専門家と遠隔地の操縦者が役割を分担しています。JDRONEの発表


ここに、遠隔運用の実像があります。通信回線だけを延ばすのではなく、離着陸、観測、整備を担う人たちをつなぎ、ひとつの調査として成立させる。その設計があって初めて、遠隔地からの飛行が役に立ちます。

西之島のドローン調査における研究船、衛星通信、無人ヘリ、小型ドローン、地上探査機の役割と、写真測量・磁気観測・採水・地上観測の関係を示したAI生成概念図。

船上発着と衛星通信、写真測量・磁気観測・試料採取・地上観測の連携。複数年度の調査を整理したAI生成の概念図で、実際の配置や観測データを再現したものではありません。



火山の「内側」を、上空から推定する


カメラで分かるのは、主に地表の姿です。西之島では、磁気センサーを運ぶことで地下の構造にも迫っています。


岩石は、含まれる鉱物や温度などによって磁気的な性質が変わります。上空で磁場の強さを測り、その分布を解析すると、地下にある岩石の磁化の違いを推定できます。


2019年のドローン観測をもとにした研究では、火口を取り囲む領域と島の北東側に、周囲より磁化の強い構造が見つかりました。研究チームは、1973~1974年の噴火でマグマが通った痕跡との関係を指摘しています。東京大学地震研究所の共同発表


いわば、火山の表面を撮る調査と、火山が成長してきた履歴を探る調査を、上空からつないでいるわけです。


もちろん、磁気データの解釈には地形や岩石の性質を踏まえた解析が必要です。観測値から地下構造を推定し、地質調査などと照らし合わせて理解を深めます。この過程で求められるのは、決めた範囲を、比較できる品質で測る飛行です。安定した航路や観測条件そのものが、研究成果を支えています。



空撮写真が、島の成長を測るデータになる


西之島の写真には、「どこまで陸地が広がったか」「どれだけ地形が高くなったか」を測る役割もあります。


重なり合う写真の中から同じ場所を見つけ、撮影位置や地形の形を計算する写真測量では、島を立体的なデータとして復元できます。そこから、標高を表す数値標高モデルや、地形による画像のひずみを補正したオルソ画像を作ります。


国土地理院は2014年の無人航空機撮影で、こうした処理を行い、面積、体積、平均標高とその変化を求め、火山活動評価の基礎データとして活用しました。国土地理院の技術報告


重要なのは、異なる時期を比べられることです。同じ位置にそろえた地形データを比較すれば、堆積した場所や削られた場所を調べられます。


一方、噴煙で地面が隠れたり、撮影方向が偏ったりすると、復元できる範囲や精度に影響します。上陸が難しい場所では、測量の基準点を置くことにも制約があります。国土地理院の報告にも、撮影経路や位置精度、画像解析に関する課題が整理されています。国土地理院の報告書本文


見栄えのよい3Dモデルと、変化を数値で説明できる地形データ。その間を埋める撮影・解析の仕事に、調査の技術力が表れます。



水や岩石を持ち帰ると、映像の意味が変わる


西之島周辺の海には、火山活動に関係する変色水が現れます。その色を記録し、さらに水を採って成分を調べることで、観察を分析へ進められます。2025年の調査でも、無人ヘリによる磁気観測と並行して、小型・中型ドローンによる変色水の採水や地形測量が行われました。JAMSTECの調査概要


岩石の採取にも大きな意味があります。2018年に公表された研究では、無人ヘリコプターなどを使って採取した西之島の溶岩を分析し、安山岩質マグマの成因を調べました。この成果は、大陸をつくる材料が海洋の火山でどのように生まれるか、という問いにつながっています。産業技術総合研究所の発表


写真、地形、磁気、試料。それぞれのデータが、別の観測だけでは分からない部分を補います。


ドローンの価値も、搭載するカメラの性能だけでは測れなくなります。何を運び、何を持ち帰り、その結果として何を明らかにするのか。観測目的から機体や装置を選ぶ発想が必要になります。



火山を調べながら、生態系への影響を抑える


西之島には、新しい大地に生き物が定着し、生態系が形成されていく過程を調べる場所としての価値もあります。そこで難しくなるのが、調べるための人間の活動が、観測対象に影響を与えることです。


2024年度の調査では、UAVで陸上探査機を運び、昆虫を調べるトラップや自動撮影カメラを遠隔で設置しました。火山ガスの観測装置を運び、成分を直接観測する取り組みも行っています。一方、風や海況の悪化によって実施できなかった作業も報告されています。環境省・2024年度調査結果


これは、実用化を考えるうえでも示唆的です。飛べる日を選び、実施できる作業を見極め、観測の優先順位をつける。現場の成果は、機体の仕様に加え、こうした判断に左右されます。


さらに、2026年10月に公表された調査結果では、島に無人探査機やカメラ、衛星通信装置などを試行的に設置し、調査期間後も情報を集める取り組みが報告されました。地震計も設置され、現地の活動を遠隔でモニタリングする体制へ進んでいます。環境省・2026年度調査結果


船が滞在する間に集中的に測る調査から、船が去った後も観測を続ける仕組みへ。空のドローンと地上の探査機、据え置きの観測機器が組み合わさり、調査できる時間が広がっています。



西之島が示す、ドローン産業の実力


西之島の調査を「危険な火口へ近づく飛行」として見ると、技術の一部だけを捉えることになります。上陸の可否や危険の範囲は、その時点の火山活動や警報、調査計画によって変わります。2026年度にも、警戒が必要な範囲の外で上陸調査が実施されています。環境省の調査説明


その条件を見極めながら、人と機械の役割を組み替え、必要な情報を取得する。西之島の調査のすごさは、ここにあります。


船上発着には運用技術が必要です。遠隔操縦には通信と責任分担の設計が必要です。磁気観測には飛行の安定性が、地形比較には撮影と解析の一貫性が、試料採取には対象に合わせた装置が必要になります。


こうした仕事は、災害現場やインフラ点検にもつながります。現地へ人を送りにくい場所で、何を測れば判断できるのか。そのために、どの機体とセンサーを使い、誰が運用し、どうデータを評価するのか。


西之島は、機体、通信、観測装置、人の判断を束ねる力が成果を生むことを示しています。


迫力ある空撮映像の先には、地形の変化があり、地下構造の手掛かりがあり、新しい大地に定着する生き物の記録があります。その一つひとつを、次の調査につなげていく。そこに、西之島のドローン調査の厚みがあります。

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