ドローンを止めないポータブル電源ー電池素材・給電技術と主要9ブランドを比較
現場でドローンを止めるのは、飛行時間だけではありません。予備バッテリーを使い切り、送信機の残量が減り、画像を確認するパソコンも電源を求める。機体はまだ飛べるのに、電気が足りずに仕事を切り上げることがあります。
そこで必要になるのが、ポータブル電源です。ただし「大容量だから安心」「出力が大きいから速く充電できる」とは限りません。使う機体、充電器、移動の仕方によって、向いている電源は変わります。
DJI、EcoFlow、Jackeryに加え、Anker、BLUETTI、Victor、ALLPOWERS、PECRON、Zendureまで。代表的な製品を見ながら、電池の素材と給電の仕組みを、ドローンの一日の仕事に引きつけて整理します。
飛ぶ電池と、地上で支える電池は役割が違う
機体に積むバッテリーは、軽さが飛行時間に直結します。一方、地上に置く電源では、毎日の充放電に耐えられるか、車に積み降ろしできるか、休憩中にどれだけ電力を戻せるかが重要です。
ここで混同したくないのが、電池セルのエネルギー密度と、完成した製品の重さです。ポータブル電源には、セルだけでなく、保護回路、インバーター、冷却部品、頑丈な筐体も必要です。素材の性能だけでは、現場に持ち込む荷物の重さは決まりません。
例えばDJI Power 1000 V2は容量1,024Wh、重量約14.2kgです。この数字には、電気を安全に取り出すための仕組みも含まれています。出典:DJI Power 1000 V2 仕様
Whは「使える量」、Wは「一度に出せる力」
最初に確認したいのは、容量のWhと出力のWです。1,000Whの電源に400Wの負荷をつなぐと、単純計算では2.5時間動きます。実際には変換損失や電源自身の消費があるため、使える時間は短くなります。
仮に負荷まで届く電力量を表示容量の80%と置けば、同じ例は約2時間です。これは考え方を示す試算であり、すべての製品に共通する効率ではありません。
さらに、ACの合計出力、コンセント1口の上限、USB-Cの上限、同時使用時の制限は別々です。「2,000W」と大きく書かれていても、使いたい端子からその電力を取り出せるとは限りません。瞬間最大出力や、電圧を変えて負荷を動かすブースト機能も、通常の連続出力と分けて読みます。

リン酸鉄、三元系、LTO。何を変えた電池なのか
ポータブル電源でよく見かけるLFP、いわゆるリン酸鉄リチウムイオン電池は、正極の材料を指します。三元系のNMCも正極材料の分類です。LFPはエネルギー密度ではNMCに譲る一方、熱的な安定性や繰り返し使う用途で選ばれています。ただし、LFPなら発火しない、という意味ではありません。出典:米エネルギー省 電池安全戦略
これに対し、LTO(チタン酸リチウム)やシリコンは主に負極の話です。LTOは急速な充放電、長いサイクル寿命、低温での利用を狙う材料です。東芝SCiBもこの系統ですが、許容温度や出力はセルの種類とシステムの設計で変わります。「寒さに強い電池」と「低温でもそのまま急速充電できる製品」は同じではありません。出典:東芝 SCiBの特長
シリコン系負極は、より多くの電気を蓄えるための選択肢です。その一方で、充放電に伴う体積変化と劣化への対策が必要です。全固体電池は電解質を変える技術ですから、シリコンと全固体は対立する分類ではなく、組み合わせて研究されることもあります。出典:シリコン負極と硫化物系固体電解質を組み合わせた研究
「新素材」という言葉を見たときは、正極を変えたのか、負極を変えたのか、電解質を変えたのか。それとも電池を収める構造を変えたのか。この順に見ると、何が進化したのかがつかみやすくなります。
電源の実力は、電池の外側でも決まる
セルの電圧や温度を監視するBMS、直流を交流に変えるインバーター、電圧を調整するDC-DC回路。ポータブル電源は、これらを組み合わせた小さな電力設備です。高出力をうたっていても、暑い現場で熱を逃がせなければ出力を落とす必要があります。
GaN(窒化ガリウム)などのパワー半導体は、電力変換回路の小型化や高効率化に関わります。ただし、GaN採用の一言で製品全体の効率や冷却性能まで決まるわけではありません。出典:Texas Instruments ポータブル電源の構成、GaN技術
日常の運用では、低負荷時の自動停止設定も見落とせません。バッテリーを充電するときは問題がなくても、通信機器だけを小さな負荷で動かしていると、電源が待機扱いになる場合があります。使う機器に合わせ、取扱説明書で設定と動作を確かめます。
AC、USB-C、専用端子。充電経路を短くする意味
一般的な接続では、ポータブル電源の直流をAC100Vに変え、ドローンの充電器が再び直流に戻し、飛行用バッテリーへ送ります。途中で変換が重なるほど、損失や発熱の要因も増えます。
対応するUSB-Cや専用DC端子を使えれば、ACへの変換を省ける場合があります。ただし、直流なら無損失というわけではなく、必要な電圧への変換と充電制御は残ります。USB Power Deliveryの規格は最大240Wまでを扱いますが、実際の電力は電源、ケーブル、受け側の対応で決まります。出典:USB-IF USB Power Delivery
DJIのSDCは、対応する機体バッテリーへの充電経路を用意する仕組みです。Power 1000 V2の取扱説明書では、Matrice 30、Air 3、Mavic 3、Inspire 3、Matrice 4向けのケーブルが案内されています。電源本体だけでなく、ケーブルとバッテリーを含めた対応確認が必要です。また、SDC-XT60の出力をリチウム電池へ直接つなぐ使い方はできず、指定された充電器を介します。出典:DJI Power 1000 V2 取扱説明書
ポータブル電源の主要7ブランド、10製品を比べる
まずは日本向けの公式情報を中心に、1〜2kWh級の代表製品を並べます。容量は蓄えられる量、重量は持ち運び、AC出力は接続する充電器との相性を見るための数字です。充電器との組み合わせを実測した比較ではありません。
ブランド・製品 | 容量 | 重量 | AC出力の公表仕様 |
DJI Power 1000 V2 | 1,024Wh | 約14.2kg | 100〜120V・最大20A |
DJI Power 2000 | 2,048Wh | 約22kg | 100〜120V・最大25A |
EcoFlow DELTA 3 Plus | 1,024Wh | 約12.5kg | 定格1,500W |
EcoFlow DELTA 3 Max | 2,048Wh | 約20.3kg | 定格2,200W |
Jackery 1000 New V3 | 1,024Wh | 約10.6kg | 定格1,500W |
Jackery 2000 New V2 | 2,048Wh | 約18.6kg | 定格2,200W |
Anker Solix C1000 Gen 2 | 1,024Wh | 約11.3kg | 定格1,500W |
BLUETTI AORA 100 V2 | 1,024Wh | 約11.5kg | 定格1,800W |
Victor BN-RF1100 | 1,152Wh | 約18.3kg | 合計1,500W |
ALLPOWERS R1500 | 1,152Wh | 公式掲載ページでは比較用重量を確認できず | 連続1,800W |
DJIは地域別の電圧・電流仕様をそのまま記しました。広告の最大W値を、日本の100V環境における連続定格と読み替えてはいません。コンセント1口の上限、同時出力、バイパス運転の条件も、接続前に個別確認が必要です。
仕様出典:DJI Power 1000 V2/Power 2000(地域別仕様)/EcoFlow DELTA 3 Plus/DELTA 3 Max/Jackery 1000 New V3/2000 New V2/Anker/BLUETTI/Victor/ALLPOWERS(認定整備済製品の公式掲載)
ドローン用ポータブル電源、編集部が選ぶトップ3ブランド
国内で小〜中型ドローンを運用し、1kWh級の電源を現場へ持ち込むなら、DIIJ編集部の選定は1位DJI、2位EcoFlow、3位Jackeryです。機体への充電経路、電源自体への補給、運搬の負担を基準にしました。メーカー公表仕様に基づく用途別の評価で、実機を同条件で測った順位ではありません。
1位 DJIー対応するDJI機を繰り返し飛ばすなら
代表機はPower 1000 V2。選ぶ理由は、対応するフライトバッテリーへSDC経由で充電できることです。Matrice 4、Matrice 30、Mavic 3、Air 3シリーズなど、機体に合う専用ケーブルを用意できる現場では、充電構成をまとめやすくなります。送信機やパソコンへのUSB-C給電も合わせて考えられます。ただし、すべてのDJI機が専用充電の対象ではありません。対応外の機体や他社機を中心に使う場合は、この1位の理由は弱まります。出典:DJI Power 1000 V2 公式情報
2位 EcoFlowー車で現場を回り、使った電力を戻すなら
代表機はDELTA 3 Plus。1,024Wh・AC定格1,500Wに加え、別売の800W Alternator Chargerによる車両からの補給や、対応する増設バッテリーを組み合わせられます。移動の合間に電力を戻し、ドローンの純正AC充電器とパソコンなどを使う運用に向く、という評価です。走行充電器は車両への適合確認と取付が必要で、シガーソケットにつなぐだけの構成とは異なります。AC負荷の合計は定格内に収めます。出典:EcoFlow DELTA 3 Plus 公式情報
3位 Jackeryー駐車場所から電源を運ぶなら
代表機は1000 New V3。容量1,024Wh、AC定格1,500Wで約10.6kgです。比較表のDJI Power 1000 V2やDELTA 3 Plusより軽く、車から離れた撮影場所へ電源を持ち込むときに候補になります。専用充電の統合性よりも、必要な容量を無理なく運べることを重視した選定です。撮影機材と一緒に運ぶ小規模チーム向けと考えると、位置づけがはっきりします。出典:Jackery 1000 New V3 公式情報
対応DJI機への充電を優先するならDJI、車両を含めた補給体制を組むならEcoFlow、運搬の軽さを優先するならJackery。この順番は現場条件で入れ替わります。大型機の高出力充電や200V給電が必要な現場は、この1kWh級の選定とは別に設計します。
メーカーごとの違いは、現場のどこに効くか
DJI:対応機体への充電経路から選ぶ
DJIの電源を見る理由は、容量だけではありません。SDCを介した対応バッテリーへの充電を含めて、飛行までの準備をそろえられることにあります。対応ケーブルを使える機体を運用しているなら、AC充電器を何台並べるかとは別の選択肢になります。
EcoFlow:使った電力をどう戻すかまで考える
DELTA 3 Plusは、対応する増設バッテリーや車両給電との組み合わせが検討点になります。一方、容量の大きいDELTA 3 Maxは、公式比較では容量拡張が非対応です。太陽光入力もPlusが最大1,000W、Maxが500Wと異なります。型番の「大きい方」へ替えれば、小さい方の機能がすべて付いてくるわけではありません。出典:EcoFlow DELTA 3 Max 製品比較
Jackery:車から現場まで運ぶ重さを見る
1000 New V3は約10.6kg、2000 New V2は約18.6kgです。駐車位置から機材を運ぶ現場では、積み降ろしの回数も効いてきます。同じ「1000 New」「2000 New」でも世代によって容量と重量が違うため、V3、V2まで含めて型番を確認します。出典:Jackery 1000 New V3、2000 New V2 発表
Anker:1kWh級の持ち運びと充電待ち時間を見る
Solix C1000 Gen 2は約11.3kg、定格1,500Wです。日本仕様では、専用アプリの超急速充電モードで最短約54分の満充電を案内しています。現場へ向かう前に十分なAC電源を確保できる運用なら、この回復速度が役立ちます。54分はメーカーの試験条件での値で、いつでも同じ時間になるわけではありません。出典:Anker Solix C1000 Gen 2
BLUETTI:同じ1kWhでも出力と入力を見比べる
AORA 100 V2は1,024Wh、約11.5kg、AC定格1,800W。容量が近くても、つなげられる充電器の構成は変わります。取扱説明書はDC入力について最大1,000W、12〜60V、最大20Aを示しています。太陽光パネルを選ぶ場合は、Wだけでなく入力電圧の範囲も合わせる必要があります。出典:BLUETTI AORA 100 V2 取扱説明書
Victor:容量、温度条件、現場の保守体制を合わせて見る
JVCケンウッドが展開するVictorには、BN-RF1100とBN-RF1500があります。BN-RF1100は1,152Wh・約18.3kg・合計1,500Wで、充電温度は0〜40℃です。重量だけならほかの候補に軽い製品もあります。法人でそろえるなら、購入後の問い合わせ窓口や保守の手順まで含めて比べたいところです。ブランドが日本企業であることと、電池セルや製品の製造国は分けて考えます。出典:Victor 公式仕様
ALLPOWERS:容量と連続出力を確認し、販売区分も見る
R1500は、公式サイトで1,152Wh、連続1,800Wと案内されています。今回参照したページは認定整備済製品です。新品と整備済品では在庫や保証条件が異なることがあるため、製品名だけで比較せず、販売区分までそろえる必要があります。出典:ALLPOWERS R1500 公式掲載
さらにPECRON、Zendure。大型化すると「運ぶ電源」の意味も変わる
候補はこの7ブランドに限りません。PECRONも、E1500LFPなどの容量拡張型製品を展開しています。ただし、今回確認したのは海外向け公式ページです。日本で使う際には、国内向けの電圧、端子、販売窓口、保証条件を確認してから比較に加えます。出典:PECRON E1500LFP 海外公式製品ページ
ZendureのSuperBase V4600は、日本向け公式ページで4.6kWhの容量と100V/200Vの出力を案内しています。この規模になると、手で運ぶ予備電源というより、車両や拠点に組み込む電力設備として考える方が自然です。200V対応の有無は大型充電器では大きな違いですが、接続できることとメーカーが動作を確認した組み合わせであることは別です。出典:Zendure SuperBase V4600 日本向け公式ページ
大型ドローンでは、100Vと200Vの差が仕事を変える
大型機の充電器では、入力電圧によって充電能力が変わります。Matrice 400向けのDJI BS100は、TB100への充電出力について、AC100〜110V入力で約1,185W、110〜180Vで約1,474W、180〜240Vで約2,184Wとしています。
これはバッテリー側への充電出力で、電源から引く入力電力そのものではありません。充電器の損失や、ほかの接続機器の分も見込む必要があります。100Vのポータブル電源を大容量にしても、それだけで200V入力時の充電速度になるわけではないのです。出典:DJI BS100 Intelligent Battery Station 公式仕様
現場では「充電器が動いた」だけでなく、何本を同時に、何分で次の出動に戻せるかを確認します。容量、連続出力、入力電圧、バッテリーの冷却待ち。この四つがそろって初めて、一日の飛行回数が見えてきます。
何回充電できるか。現場では「次に飛べる本数」で考える
おおよその回数は、「電源の容量 × バッテリーまで届く割合 ÷ 1回に補う電力量」で求めます。例えば1,000Whの電源で、移送割合を仮に80%、1回に補う量を100Whとすると、計算上は8回です。
ただし、これは試算です。送信機やパソコンの使用分、残しておく予備電力、温度による制限をまだ含んでいません。空に近いバッテリーを満充電にするのか、残量40%から80%へ戻すのかでも回数は違います。
充電ハブも、複数本を差し込めるからといって、すべてを同時に最大出力で充電するとは限りません。飛行中、冷却中、充電中、待機中のバッテリーを分けて、次の離陸時刻までに何本そろうかを考える方が実用的です。
太陽光と車両給電は、電力を補う時間の設計
太陽光パネルは現場での補給手段になりますが、定格出力をそのまま一日中取り出せるわけではありません。日射、向き、影、温度で変わります。MPPTは条件に合わせて電力を取り出す制御であり、日射の不足を埋める仕組みではありません。出典:Victron Energy 太陽光充電の動作と制約
仮に平均200Wを3時間得られたとして600Whです。ここから充電時の損失も生じます。これは定格200Wのパネルが必ず600Whを生むという意味ではありません。車両給電も、アクセサリーソケットと専用の走行充電器では供給できる電力が違います。
複数の現場を移動するなら、移動時間に電力を戻す設計が向きます。同じ場所で長時間飛ばすなら、補給を期待しすぎず、必要な容量を最初から持ち込む方が安定することもあります。
次の素材は、すぐ空を飛ぶとは限らない
ナトリウムイオン電池では、CATLなどが産業化を進めています。資源の調達や低温特性に期待がある一方、エネルギー密度や材料の供給網には課題も残ります。地上の蓄電や車両での採用と、重量制約の厳しいドローン搭載用電池への採用は分けて見たいところです。出典:CATLの技術発表、IEA Global EV Outlook 2026 電池動向
全固体電池も、電極と電解質の接触、製造工程などを含めた開発が続いています。新素材の発表、試作セル、量産パック、市販電源は、それぞれ違う段階です。「全固体だから、軽くて安全で寒さにも強い」と一括りにせず、完成した製品でどの条件の性能が確認されたかを見ていく必要があります。出典:ローレンス・バークレー国立研究所 全固体電池の研究
選ぶのは電源一台ではなく、一日の運用
小型機の短時間撮影なら、機体バッテリーを多めに持つだけで足りることもあります。点検を繰り返すなら、1kWh級を運びやすく使う。大型機を続けて飛ばすなら、2kWh以上の容量だけでなく、充電器に必要な電圧や出力まで設計する。選び方は現場ごとに違います。
そのうえで、雨を避けられる設置場所、排熱できる空間、傷んだ電池を充電しない手順も必要です。電池部分の保護等級と、本体全体の防水性は同じとは限りません。
仕様表の大きな数字よりも、「何時に何本目を飛ばせるか」。ポータブル電源をその問いから選ぶと、機体の性能を一日の仕事につなげやすくなります。本記事は2026年10月24日時点のメーカー公式情報を基にしています。トップ3は小〜中型ドローンの現場運用を想定したDIIJ編集部の選定で、実測による性能順位ではありません。地域・世代・販売区分で仕様が異なり、価格と在庫は変動するため記載していません。用途に関する評価と計算例はDIIJ編集部の考察です。




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