中国のドローン輸出規制は何が変わるのかー2026年第49号公告を読む
中国のドローン輸出規制が、11月18日から新たな運用に入ります。商務部、海関総署、中央軍事委員会装備発展部が10月19日に公表した、2026年第49号公告です。機体の仕様に加え、部品、ソフトウェア、技術と、輸出手続きを整理しています。第49号公告原文
日本の事業者にとっての関心は、欲しい製品が届くか、納入後も保守や改良を続けられるかでしょう。発表を読むときは、製品の性能、使う相手と用途、適用する手続きの三つに分けると、調達への影響が見えてきます。
民生貿易を続けるために、管理の条件を整える
中国商務部は、軍民両用技術の管理と、民生分野での国際貿易・協力を両立させる方針を説明しています。技術の普及に合わせて対象を見直し、要件を満たす輸出申請を承認するという立場です。今回の公告も、管理対象の整理と、条件付きの手続き簡素化を組み合わせています。商務部の公式説明
読み手が確かめたいのは、取引する製品と顧客が、どの条件に当たるかです。「中国製」という大きな括りから、個別の品目と取引の中身へ、確認の単位を細かくする必要があります。
完成機から、自律化を支える技術まで
公告が扱う範囲は広く、完成機、専用の自動操縦装置、条件に該当するエンジン・モーター・ESC・プロペラ・通信装置、関連ソフトウェアや技術に及びます。対象機向けの飛行制御、群制御、自律航法、障害物回避、機体システム設計も挙がっています。公告第1項
完成機の9A012.aでは、自然視距外で制御飛行できることを前提に、飛行時間30分以上3時間未満と、46.3km/h以上の突風下での離陸・安定制御能力を組み合わせた区分、または飛行時間3時間以上の区分が示されています。各区分の技術条件を合わせて読むことが大切です。
部品には専用設計や数値条件、技術には対象品目との関係が定められています。モーター、自律航法、ソフトウェアといった名称だけで分類を決めるより、設計目的と対象機を示した資料を取引先と共有するほうが、実務を前へ進められます。
主な5分野を、管理番号と条件で読み分ける
下表は公告第1項の主な対象を、編集部が5分野に整理したものです。「すべて」と「いずれか」、専用設計、対象機との関係を分けて記載しています。
分野・対象/管理番号 | 主な対象・条件 |
① 完成機 9A012.a | 操縦者の「自然視距」外で制御飛行できる無人航空機・無人飛行船で、次のいずれか。 (1)最大飛行時間30分以上3時間未満、かつ46.3km/h(25ノット)以上の突風下で離陸・安定した制御飛行が可能。 (2)最大飛行時間3時間以上。 |
① 完成機 9A112 | 9A012の対象に該当しない無人航空機のうち、次のいずれか。 (a)射程・航続距離300km以上。 (b)自律飛行制御・航法能力を持ち、80L超のエアロゾル散布装置を搭載、または搭載できる設計。 (c)自然視距外から操縦でき、同じく80L超の散布装置を搭載、または搭載できる設計。 娯楽・競技専用の模型航空機は、この9A112区分の対象外。 |
② 自動操縦装置 7A103.b | 無人航空機向けに専用設計された自動操縦装置(オートパイロット)。「専用設計」は設計目的と固有性能で判断します。公式FAQは、有人航空機や自動車など向けの設計用途がある場合、この専用設計の定義に該当しないと説明しています。 |
③ 推進系:エンジン 9A012.b | 無人航空機・無人飛行船向けに専用設計され、次のいずれか。 (1)高度15,420m(50,000ft)超の高空飛行用に専用設計された吸気式ピストン/ロータリー内燃機関。 (2)最大連続出力16kW超の航空エンジン。 (3)推力400N以上のターボジェットエンジン。 |
③ 推進系:モーター 9A901.a | 無人航空機のプロペラ用に専用設計されたブラシレスモーターで、以下の4条件すべてを満たすもの。 定格電圧48V以上/定格出力3kW以上/定格出力密度3kW/kg以上/定格回転数3,000rpm以下。 |
③ 推進系:ESC 9A901.b | 9A901.aの対象モーターとの組合せ用に専用設計された電子速度制御器で、定格電圧48V以上、かつ定格出力3kW以上。 |
③ 推進系:プロペラ翼 9A901.c | 無人航空機に使用可能な炭素繊維複合材製の翼で、次のいずれか。 (1)固定ピッチ・翼構造が回転中心を通るもの:回転中心から翼端まで762mm以上。 (2)固定ピッチ・翼構造が回転中心を通らないもの:翼根端面から翼端まで648mm以上。 (3)翼根部に可変ピッチ機能を持つもの。原文はピッチ変更ピンや、ピッチ変更レバーを接続する穴などの構造を説明しています。 |
④ 通信 9A012.e | 9A012.aの対象機向けに専用設計された無線通信装置で、次のいずれか。 (1)機上無線装置の等価等方放射電力(EIRP)30dBm以上(1W相当)。 (2)1地上局で10機を超える機体を制御できる能力。 EIRPはアンテナを含む放射性能の指標です。 |
⑤ ソフトウェア 9D901 | 9A012.a・9A112の対象機の開発・製造・使用のために専用設計されたソフトウェア。 |
⑤ 飛行・航法・設計技術 9E901 | 9A012.a・9A112の対象機の開発・製造・使用に関わる、飛行制御(単機・群制御など)、自律航法(慣性航法、地形照合航法、妨害耐性を持つ衛星航法など)、検知・回避、機体全体のシステム設計技術。 |
⑤ 部品・搭載関連技術 7E103・9E902 | 7E103:7A103.aの対象品の開発・製造・使用に関するジンバル安定化技術と、7A103.bの対象品に関する任務ペイロード技術。 9E902:9A012.b・c・d・e、9A901の対象品の開発・製造・使用に関する技術。参照される既存リストの各番号も確認します。 |
⑤ 極地用機体の技術 9E903 | 極地向け軽量無人航空機の設計・製造技術で、以下の5条件すべて。 船上の移動プラットフォームまたは氷面で離着陸/離陸可能な最大風速が風力6級以上/最低動作温度−30℃以下/最大飛行時間6時間以上/ペイロード搭載能力10kg以上。 |
飛行時間は、国際標準大気の海面・無風状態に換算する定義です。公式FAQはGB/T 38058-2019の「満載水平飛行」、耐風性能はGB/T 38930-2020の「最低作業耐風能力」に基づく測定を指定しています。プロペラの762mm・648mmは、それぞれ上記の起点から翼端までの長さです。
関連する陸上無人機・対ドローン技術も記載
公告は、弱い通信環境で使う複雑な陸上無人プラットフォームの人と機械を組み合わせた操縦技術(9E904)も挙げています。画像の意味情報圧縮率75%以上、1フレームの画像復元遅延150ms以下、端末側でのタスク連鎖の正確な解析率70%以上、自然言語対話の応答遅延1秒以下、未知環境でのタスク実行成功率95%以上という5条件すべてを満たすものです。
さらに、0A903の対象品の開発・製造・使用に関する対無人航空機技術など(0E903)も含まれます。この部分は陸上無人システムや対ドローン技術の項目として読み分けると、公告の範囲を把握しやすくなります。
出典:第49号公告・第1項、公式FAQ・問1〜3。表は主な項目の要約です。個別品目は原文の全条件と現行の軍民両用品リストを照合します。
判定に使うのは、仕様を裏付ける資料
公式FAQは、9A012.aの飛行時間について、GB/T 38058-2019の満載水平飛行に関する規定に基づいて測定すると説明しています。耐風性能も指定規格による評価です。広告の最大飛行時間と、輸出分類に用いる試験値を照合する必要があります。公式FAQ・問2、問3
日本の購入側も、型番、搭載構成、試験条件を揃えて問い合わせると話が早くなります。販売店への「この機体は買えますか」という質問を、輸出分類と納期を確認できる質問へ具体化するわけです。

民生向けには、条件付きの登録方式を用意
9A012.a.1の対象機などには、条件を満たす取引で輸出前の情報登録により輸出証憑を得る方式が設けられます。一定の輸出実績や社内管理体制などを備えた企業には、通用許可の仕組みもあります。公告第4項
登録方式の適用は、最終ユーザーと最終用途によって分かれます。軍・警察、個人、制裁リスト掲載者やその代理商などは対象外です。軍事用途なども対象外となります。こうした取引では、個別許可や適用される禁止措置を含めて確認します。公式FAQ・問6、問7
手続きを軽くする制度ほど、受取人、その先の利用者、用途の説明が重要になります。流通の途中で相手が増える場合は、販売店と利用企業の役割を最初に明確にしておきたいところです。
日本向けは、最終顧客まで見て調達を設計する
日本向けには、2026年1月6日の第1号公告による軍民両用品の規制も重なります。日本の軍事ユーザー、軍事用途、日本の軍事力向上に資するその他の最終ユーザー・用途への輸出を禁止し、中国原産品の第三国経由の移転にも規定を置いています。第49号公告と併せて確認する必要があります。対日輸出管理の公告
ここからは調達への示唆です。日本で組み立てる機体にも、中国由来の部品や技術が入る場合があります。最終顧客が決まった段階で、想定用途に継続供給できるかを確かめることが、見積もりと納期の精度を上げます。
完成機の購入、部品の輸入、技術ライセンスの取得は、それぞれ取引の形が異なります。保守用の交換部品、設計変更に必要な資料、ソフトの更新まで、事業を続けるために何を受け取るのかを洗い出しておくと、供給の弱いところを見つけやすくなります。
11月18日へ向けて、供給の見通しをつくる
まずは主要な機体と部品について、仕入先、輸出分類、最終顧客、用途、必要書類、納期を一枚にまとめる。そのうえで、更新や修理のために継続購入する品目を確認する。この作業は、調達担当と設計、営業、保守の間で共有してこそ役立ちます。
供給先を増やす場合は、代替部品での動作検証や品質確認にも時間を見込む必要があります。取引先との説明資料を整えることと、技術的な代替性を高めることを並行して進めたいところです。
第49号公告を日本の産業の側から読むと、製品の性能と同じくらい、調達を説明できる力が問われます。どの技術を使い、誰に届け、どう保守するか。そこまで見通して契約できる企業ほど、顧客にも長く使えるサービスを提案できます。
本稿は2026年10月27日時点の公表資料に基づきます。第49号公告は11月18日施行予定です。制度の説明は公告と公式FAQ、調達・事業運営への示唆はDIIJ編集部の考察です。個別品目の分類は原文の全条件と輸出者側の確認によります。図版はDIIJ編集部が作成したAI生成の概念イラストです。



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