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ドローン物流の矛盾 ー モンゴルの血液輸送が示すビジネスの現実

  • 3月4日
  • 読了時間: 4分

エアロネクストがモンゴル・ウランバートルで血液製剤のドローン配送を行い、

約7カ月で422回の運用を実施したと発表しました。




PRを見れば実証内容は分かりますので、ここでは少し違う視点から見てみたいと思います。




人件費が高い国で成立するはずの技術だった


ドローン物流は、もともと人手不足の解決策として語られてきました。

陸上配送にはドライバーの人件費・労働時間・人材不足という問題があります。


そのため理論的には、人件費が高い国ほどドローン物流は成立しやすいと考えられます。


しかし現実には、社会実装が進んでいるのは、

アフリカ・中央アジア・東南アジアなど、人件費の安い地域


ここにドローン物流に対する認識の矛盾があります。 つまり、ドローン物流は「トラックの代替」には全くならないという事実です。




医療物流は本命、だが日本は既存の医療物流が強すぎる


ドローン物流が成立する条件は、コストではなく時間価値

血液や医薬品の輸送では、数十分の遅れが患者の命に関わることがあります。


そのため「安いこと」より「早いこと」が価値になります。


世界で成功しているドローン物流も、多くが血液や医療物資の輸送です。


日本の実証では、お菓子・弁当・日用品、といった配送がよく行われていますね。

しかし、これらは、急がなくてもよい・既存物流が速いという特徴があります。


つまり、日本で行われているドローン物流は、ドローンの価値が最も発揮される分野ではありません。


逆に、日本では血液輸送のインフラが非常に整っています。

日本赤十字社のネットワークによって血液製剤は全国で迅速に輸送されています。


そのため日本ではドローンで血液を運ぶ必要性があまり高くないという状況があります。


そのため、日本でドローン物流が語られるときは、過疎地・離島・人手不足といった文脈が多くなります。

確かに将来的な物流維持の観点では重要です。


ただし過疎地物流は、荷物量が少なく採算が取りにくいという問題があります。

多くの場合、自治体支援や補助金が前提になります。




ドローン物流は「物流」ではなく航空産業


もう一つ重要な視点があります。


ドローン物流は、その名前から「物流ビジネス」として語られることが多いですが、

実際の構造を見ると、むしろ航空産業に近い側面を持っているという点。


一般の物流ではトラックや倉庫、配送網といった地上インフラが中心になります。


しかし、ドローン物流で重要になるのは、

機体開発、運航管理、航空規制、空域管理、離着陸拠点といった航空システムに近い要素です。


つまり、トラックを空に置き換えるというより、

低高度の空域に小型の航空ネットワークを構築するビジネスと言えます。


実際、世界のドローン物流企業の多くは、機体開発から運航、ネットワーク管理までを一体で運営しており、

その姿は物流会社というより小さな航空会社に近いものです。


ドローン物流は単にトラックの代替として輸送コストを下げる技術としてとらえるべきではありません。


むしろ、医療物資や緊急輸送など

時間価値の高い物流を支える「小型航空インフラ」として広がるべきなのでしょう。




モンゴルという場所と日本への還元


モンゴルはドローン実証の場所として、いくつかの特徴があります。

都市渋滞が深刻・航空規制が比較的柔軟・医療物流のニーズがある。


さらにもう一つ、地政学的な背景もあります。


モンゴルは中国とロシアに挟まれた国ですが、政治的には中国依存を避ける姿勢も強いと言われています。

そのため日本企業との協力は比較的受け入れられやすい環境があります。


ただし、ここには少し考えておきたい現実もあります。


仮にドローン物流がモンゴルで事業として成立した場合でも、 運航・整備・日常のオペレーションといった多くの業務は、基本的に現地で行われます。


そのため、日本企業にとっては技術の実証や海外市場の開拓という意味合いが強く、

国内産業への直接的な経済効果はそれほど大きくならない可能性もあります。


もちろん、機体開発やシステム、運用ノウハウといった形で日本側に知見が蓄積されていく面もあります。


海外での社会実装は、

日本企業にとって新しい市場への入口であると同時に、グローバルな実証フィールドとも言えるのかもしれません。


ドローン物流は、日本で完成する産業というより、世界のどこかで先に社会実装されていく技術なのかもしれません。


日本の援助で始まったはずなのに、気が付いた時には日本よりもはるかに進んでしまっている

これどこかで見た景色ですね。


ここ、押さえておきたいところです。

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