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トルコはなぜドローン大国になれたのか―機体ではなく、産業を輸出する国

10月6日
読了時間: 5分

トルコのドローン産業を「安価な軍用機を輸出して成功した国」と捉えるだけでは、その強さを見誤る。注目すべきなのは、機体の開発と並行して、センサー、エンジン、搭載装備、訓練、保守を支える事業が育っていることだ。

国際的な存在感の中心は、防衛用の無人航空機である。民生用小型機で広がったDJIと同じ市場を制したわけではない。国内の防衛需要を起点に、海外の顧客が継続的に利用するシステムへと発展させた点に、トルコの特徴がある。



Baykarの輸出22億ドルが示すもの


Baykarは、2025年の輸出額が22億ドルに達したと発表した。2024年の18億ドルから約22%増えた計算になる。2024年には売上高の90%を輸出が占めており、海外販売は将来の構想ではなく、すでに事業の柱だ。

ただし、この数字はBaykar一社の発表値であり、トルコのドローン産業全体の市場規模でも、同社の利益額でもない。輸出契約の獲得と、製造・納入・保守を通じて利益を確保することも区別しておく必要がある。

それでも、国内向けの開発で事業を完結させず、海外需要を取り込んでいる意味は大きい。顧客が増えれば、生産設備や供給網への投資を支える需要が生まれる。売った後の整備、部品供給、教育も、産業としての厚みになる。



TB2だけではない、企業と用途の広がり


Baykarの代表的な製品にはTB2とAKINCIがある。さらに、短い甲板からの離着陸を目指すTB3や、ジェット無人戦闘機KIZILELMAへと開発対象を広げている。ひとつの成功機を売り続けるだけでなく、異なる任務へ製品群を展開している。

一方、TUSAŞ(Turkish Aerospace)はANKA、AKSUNGUR、ANKA IIIを手掛ける。航空機メーカーとしての技術基盤を持つ企業が、長時間の偵察・監視から次世代の無人機までを担っている。

小型の戦術無人機ではSTMが重要だ。同社は2026年1月、KARGUとALPAGUを含む、NATOとEUの双方に加盟する国向けの案件を発表した。この契約により、同社の無人機システムの利用国は15カ国になったという。大型の長時間飛行機と小型の徘徊型兵器は、同じ「ドローン」でも用途や調達の仕組みが異なる。複数の企業がそれぞれの市場を担う構造を見るべきだ。



国産化の核心は、重要な装備を供給できること


機体の外形だけを見ても、その国の産業力は分からない。長く運用するには、エンジン、センサー、通信、任務システムを安定して供給し、必要な改修を続けられることが欠かせない。

トルコのドローン産業を、Baykar・TUSAŞ・STMの機体、TEI・ASELSAN・Roketsanの重要装備、訓練・保守・部品供給の三層で整理した概念図
図:機体・重要装備・運用支援の三層で見るトルコのドローン産業(DIIJ作成・AI生成の概念図。実機・実設備の写真ではありません)。

TEIが開発したPD170航空エンジンは、ANKA、AKSUNGUR、TB3で飛行に使われている。ASELSANは、電子光学監視・照準システムのASELFLIR 500などについて、2024年に量産へ移行したと報告している。Roketsanは、無人機などに搭載する小型精密誘導兵器MAM-Lを開発している。

これらは、あらゆる部品を完全に国内だけで調達できることを意味しない。重要なのは、自国で開発・改修・供給を担える範囲を広げていることだ。機体を輸出できても、重要部品の供給が止まれば、納入も保守も続かない。完成機の国産化と、供給を維持できる産業基盤は、一体で考えなければならない。



輸出から、海外の航空産業との共同開発へ


次の段階を示すのが、BaykarとイタリアのLeonardoによる協業だ。両社は2025年6月、折半出資のLBA Systems設立を発表した。イタリアを拠点とし、無人航空機システムの設計、開発、生産、保守を対象にする。

DIIJは、この動きを完成機の販売から国際的な産業連携への展開と見る。自社の機体を輸出するだけでなく、相手側の技術や生産・保守基盤と組み合わせ、長期的な事業をつくる方向だ。ただし、合弁会社の設立自体が受注や収益を保証するわけではない。今後は、具体的な製品、納入、運用実績によって成果を評価する必要がある。



成功を語るとき、分けておきたい三つの評価


第一に、試験成功と実戦配備を混同しないことだ。初飛行や離着陸試験は重要な節目だが、量産して継続運用できる状態とは異なる。新型機の発表だけで、産業の成熟度を判断することはできない。

第二に、契約国数と納入・収益を分けること。輸出先が多くても、国ごとの契約規模や支援負担は違う。機体を納めた後に、どれだけ安定して運用を支えられるかが問われる。

第三に、軍用と民生用の競争力を分けること。防衛用無人機の実績を、そのまま測量、設備点検、農業用ドローンの優位性とはみなせない。顧客が求める価格、操作性、業務ソフトとの連携、販売網が異なるためだ。



日本が学ぶべきなのは「誰が使い続けるか」


日本で国産ドローンを議論すると、開発した機体の性能や部品の原産地に話が集中しやすい。だが、機体が完成して飛行に成功した段階と、事業が成立する段階には距離がある。

誰が継続的に購入し、どの任務で使い、故障時には誰が直すのか。現場から得た情報を、次の設計やソフトウェアの改善へどう戻すのか。さらに、その仕組みを海外にも提供できるのか。産業政策が評価すべきなのは、この一連のつながりである。

トルコの成功を、日本がそのまま再現できるわけではない。防衛需要も政策環境も違う。しかし、国産化を「一機をつくること」で終わらせず、顧客、供給網、運用支援までを育てるという論点は共通している。ドローン大国をつくるのは機体の数だけではない。使い続けられる仕組みを、事業として成立させる力なのだ。



※2026年10月6日時点の公開資料に基づく。輸出額・利用国数は各社発表。将来の事業展開に関する評価はDIIJの見解。

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