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自治体のドローン政策、そろそろ「飛ばす」から「産業にする」へ

  • 5月16日
  • 読了時間: 8分

戦略17分野の時代に、地域はドローンをどう位置づけるべきか


日本中の自治体で、ドローンに関する取り組みが増えています。


防災。

物流。

インフラ点検。

農業。

観光。

災害対応。

スマートシティ。


どれも重要なテーマですし、ドローンという技術が地域課題と相性がよいことも間違いありません。


人口減少が進み、人手不足が深刻化し、広い地域を少ない人員で管理しなければならない地方にとって、空から人の作業を補完できるドローンは、非常に分かりやすい技術です。


ただし、ここで少し立ち止まる必要があります。


ドローンを飛ばすことと、ドローンを地域産業にすることは、まったく別の話です。


実証実験を行い、デモ飛行を実施し、空撮映像を撮り、報告書を作る。

これはもちろん第一歩としては意味があります。


しかし、それだけでは産業にはなりません。


地域に事業者が育ち、点検や物流や防災の運用が継続され、データが蓄積され、関連する教育や保守、解析、システム開発へと広がっていって初めて、ドローンは地域産業になります。


ここを見落とすと、ドローン政策はすぐに「一度飛ばして終わり」になってしまいます。




国は「主要な製品・技術等」を具体的に提示


政府の成長戦略では、「戦略17分野」において、官民投資を優先的に支援すべき「主要な製品・技術等」を選定し、官民投資ロードマップにつなげる方針が示されています。


この中には、ドローンに直接関係する領域も多く含まれています。


防衛産業では小型無人航空機やデュアルユース技術が示されています。


航空・宇宙では無人航空機、空飛ぶクルマ、ロケット、人工衛星関連サービスなどが挙げられています。


さらにAI・半導体分野では、フィジカルAI、AIロボット、フィジカル・インテリジェント・システムを支える半導体、バーティカルAIといった領域が重視されています。


つまり、ドローンは単なる「空を飛ぶ機械」ではなく、防衛、航空、宇宙、AI、ロボティクス、データ基盤、インフラ管理、災害対応と接続する技術として位置づけられ始めているのです。


ここで自治体に求められるのは、「国がドローンを重視しているから、うちもドローンをやりましょう」という反応ではありません。


本当に必要なのは、自分たちの地域において、ドローンをどの産業課題に接続するのかを決めることです。




ドローン政策は「何に使うか」でまったく別物に


一口にドローン活用と言っても、その中身は大きく異なります。


インフラ点検に使うのか。

農業に使うのか。

災害時の状況把握に使うのか。

物流に使うのか。

観光コンテンツに使うのか。

防犯や警備に使うのか。

測量や3Dデータ化に使うのか。


それぞれ必要な機体も、人材も、許認可も、運用体制も、収益構造も違います。


例えば、インフラ点検であれば、単に飛ばせることよりも、撮影データをどう解析するか、点検結果として誰が責任を持つか、既存の維持管理業務にどう組み込むかが重要になります。


物流であれば、機体性能だけでなく、離着陸場所、荷役、配送ルート、住民理解、採算性が課題になります。


防災であれば、災害時に誰が出動し、どの通信環境で、どの情報を誰に渡すのかまで設計しなければなりません。


つまり、ドローン政策とは、機体導入政策ではありません。


地域の業務をどう再設計するか、という話です。


この点を曖昧にしたまま「ドローンを活用します」と言っても、実際には空撮イベントに少し毛が生えた程度で終わってしまいます。


映像はきれいですし、議会説明にも使いやすいのですが、それだけでは地域の生産性はあまり上がりません。


少し皮肉を言えば、ドローンは空を飛びますが、政策までふわふわしていてはいけないのです。




ドローンの“地域内バリューチェーン”を設計する


ドローンを産業にするためには、地域の中でどこに価値を残すのかを考える必要があります。


操縦者を育てるだけでよいのか。

整備や保守まで地域で担うのか。

撮影データの解析を地域企業が行うのか。

点検レポートや3Dモデル作成まで事業化するのか。

防災・観光・インフラ管理など複数分野に横展開するのか。

地域の学校や高専、大学、企業とどう接続するのか。


ここまで考えると、ドローン政策はかなり立体的になります。


逆に、ここを考えないと、地域は外部企業に実証してもらうだけになります。


外から企業が来て、飛ばして、データを持ち帰り、記事になって、終わる。

これでは、自治体としては実績が残っても、地域産業としてはほとんど何も残りません。


大切なのは、外部の技術を拒むことではありません。

むしろ外部の技術者や企業は積極的に呼び込むべきです。


ただし、そのときに地域側が「何を学び、何を内製し、何を地域企業の仕事にし、何を外部と組むのか」を決めておく必要があります。


ドローンを地域に根づかせるとは、そういうことです。




戦略とは、やることを増やすことではなく、絞ること


日本の自治体政策では、どうしても「全部やる」方向に流れがちです。


防災もやります。

物流もやります。

農業もやります。

観光もやります。

点検もやります。

教育もやります。

もちろん、それぞれ大切です。


しかし、初期段階から全部に手を出すと、結局どれも中途半端になります。


実証の数は増えても、事業化の深度は上がりません。


これはドローンに限らず、地方創生全般に見られる典型的な問題です。


本来、産業戦略とは、何をやるかを決めると同時に、何を後回しにするか、何をやらないかを決めることです。


山間地域であれば、災害対応やインフラ点検に集中するのが自然かもしれません。


広大な農地を持つ地域であれば、農業支援や圃場管理に力点を置くべきかもしれません。


港湾や工業地帯を持つ地域であれば、設備点検、警備、物流、危険区域の遠隔監視といったテーマが現実的かもしれません。


観光地であれば、空撮素材や3Dデータ化、観光DXに接続する道もあります。


地域ごとに答えは違います。


だからこそ、全国一律に「ドローン物流をやります」「空飛ぶクルマをやります」と言っても、あまり意味がありません。


政策の言葉が同じでも、地域の産業構造はまったく違うからです。




産業戦略立案には経営の知識が必要


ドローン政策を本気で産業化するなら、技術の知識だけでは足りません。


必要なのは、産業の知識、経営の知識、マーケティングの知識、そしてファイナンスの知識です。


例えば、インフラ点検ドローンを地域産業にする場合、誰が顧客になるのか、年間どれだけの点検需要があるのか、従来手法と比べてどこでコストが下がるのか、初期投資はいくらか、機体の更新費用はどうするのか、操縦者や解析者の人件費は回収できるのか、行政調達だけに依存してよいのか、といった論点を避けて通れません。


さらに、地域企業が参入するなら、既存事業との相性も重要です。


建設会社が点検ドローンに入るのか。

測量会社が3Dデータ化へ広げるのか。

警備会社が巡回業務を高度化するのか。

観光事業者が映像・デジタルアーカイブを扱うのか。

学校や教育機関が人材育成を担うのか。


こうした接続を設計できて初めて、ドローンは地域の産業になります。


逆に言えば、ここを考えずに機体だけ買っても、数年後には倉庫に眠る可能性があります。


ドローンは空を飛ぶ前に、まず事業計画の上を飛ばなければならないのです。




加賀市の取り組みが示す未来


この点で、最近記事化されていた加賀市の取り組みは他自治体にとって一つの参考になります。




加賀市の施策で注目すべきなのは、単にドローンを飛ばしていることではありません。


ドローンやAI、IoT、自動運転などの実証環境を、地域人材の育成、外部エンジニアとの接続、地域企業の参加、行政の制度設計と結びつけようとしている点です。


記事でも、加賀市がドローンエンジニア会議や実証フィールドを通じて、単なる技術導入ではなく、地域の中に技術を扱える人材と産業の循環を生み出そうとしていることが紹介されています。


もちろん、加賀市の取り組みをそのまま他地域がコピーすればよいわけではありません。


大事なのは、加賀市が「ドローンを飛ばすこと」だけを目的にしているのではなく、地域の中に技術と人材と事業機会を残そうとしている点です。


これは、これからの自治体のドローン政策にとって非常に重要な視点です。




ドローンは、地域産業を編集するための道具


ドローンは便利な技術です。


しかし、便利な技術ほど、使い方を間違えると「やった感」が出やすいものでもあります。


飛行デモは分かりやすい。

映像も映える。

報告書にも書きやすい。


だからこそ、政策としては少し危険でもあります。


本当に問うべきなのは、ドローンを飛ばしたかどうかではありません。


そのドローンによって、地域の仕事がどう変わったのか。

地域企業の売上や利益にどうつながったのか。

人材が育ったのか。

データが蓄積されたのか。

外部企業に依存するだけでなく、地域側に能力が残ったのか。


ここまで見なければ、ドローン政策は産業政策にはなりません。


これからの自治体に必要なのは、流行の技術を横並びで導入することではなく、自分たちの地域に合ったドローンの使い方を選び抜くことです。


防災なのか。

点検なのか。

農業なのか。

物流なのか。

観光なのか。

3Dデータ化なのか。


地域ごとに答えは違ってよいですし、むしろ、違っていなければおかしいのです。


日本中の自治体が同じようにドローン、MaaS、空飛ぶクルマ、AIを掲げる時代だからこそ、これからは「何をやるか」よりも、「なぜそれを自分たちの地域でやるのか」が問われます。


ドローンは、地域の上を飛ぶだけでなく、地域産業の未来をつなぐ道具になり得ます。


ただし、それには戦略が必要です。


飛ばすだけで終わらせない。実証で終わらせない。地域に人材と事業を残す。


ここ、押さえておきたいところです。

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