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『ディスクロージャー・デイ』とドローン撮影―スピルバーグの現場で広がった「飛ぶカメラ」の仕事

10月10日
読了時間: 5分

『ディスクロージャー・デイ』とドローン撮影をテーマに、夜空の謎めいた光、撮影用ドローンと照明用ドローンを描いたAI生成イメージ。映画の場面写真ではありません。
映画の雰囲気をもとにしたAI生成イメージです。作品の場面写真ではありません。

スティーヴン・スピルバーグ監督の最新作『ディスクロージャー・デイ』が公開されています。未知の存在と、その秘密の開示を描くSF作品ですが、ドローン業界から見ると、撮影現場にも興味深い話があります。


この映画では、ドローンがカメラを運ぶだけでなく、照明を動かす仕事も担いました。しかも、撮影チームが提案した使い方をきっかけに、予定していた仕事が大きく増えています。


映画の撮影という具体的な現場を通じて、ドローンの用途がどう広がるのか。その過程を追ってみます。



8日間の予定が、38日間の仕事になった


撮影を担当したFlying Monsterのデクスター・ケネディは、米国のカメラオペレーター団体SOCのインタビューで、当初はARRI 235というフィルムカメラを大型ドローンに載せ、8日間の撮影を行う予定だったと説明しています。それが最終的には、DJI Inspire 3を使う38日間の仕事に広がりました。SOCの撮影スタッフインタビュー


転機は、ガソリンスタンドでの撮影でした。空中を移動するカメラを撮影スタッフの手へ受け渡し、そのまま手持ち撮影につなぐ「ドローンキャッチ」を提案したところ、スピルバーグがその可能性に反応したといいます。翌日には、別の撮影への依頼が入りました。さらに、エレベーターから室内の大きなセットへ移動する長回しにも、ドローンが使われています。SOCの同インタビュー


この数字は、作品全体の撮影日数や、ドローンが飛び続けた時間を示すものではありません。ドローンチームが関わる仕事の範囲が、当初の想定を超えて広がったという証言です。


ここには、用途開拓の実際があります。


監督が最初からドローンの能力をすべて理解していたわけではありません。現場で具体的な動きを見せたことで、次の撮影を思いつく。その新しい要求に応えると、さらに使い方が増えていく。機体の説明資料を渡すだけでは生まれにくい需要が、撮影の提案から生まれています。



空中と地上を、ひと続きにする


空撮と聞けば、街や海岸を上空から見渡す映像を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、空中から人物の近くへ移動し、地上の撮影へつなげられると、カメラが担う役割は変わります。


遠くから場所を見せ、その場所にいる人へ近づいていく。途中で映像を切り替えずに移動すれば、観客は人物と周囲の空間の関係を、ひと続きの動きとして理解できます。高さや距離の変化そのものが、物語を伝える手段になります。


Flying Monsterは、ドローンキャッチを『グレイテスト・ショーマン』などでも使ってきたと紹介しています。同社の説明では、撮影機材を支えるグリップ部門、カメラ部門、制作側の連携が、この手法を成立させています。


つまり、機体を買えば同じ撮影ができる、という話にはなりません。


どこを飛ぶのか。人物がどのタイミングで動くのか。カメラをどこで受け渡すのか。画面に何を残すのか。それぞれを合わせて、初めてひとつの映像になります。


このような撮影では、操縦の技術とともに、監督や撮影監督の意図を読み取り、現場で実行できる動きに置き換える力が問われます。



ドローンで「光」を動かす


もうひとつ面白いのが、照明への利用です。


撮影監督のヤヌス・カミンスキーは、米国映画協会のインタビューで、未知の飛行体からの光を表現するため、ドローンに強い照明を取り付けたと話しています。光源を上昇、下降、横移動させ、地面や人物の顔に実際の影をつくりました。その光を手がかりに、後からCGの飛行体を組み立てています。


画面に登場する飛行体は架空でも、その光を受ける人物や地面は現場にあります。そこで本物の光を動かせば、顔の陰影、地面を横切る影、レンズに差し込む光を、一緒に撮影できます。


CGの物体だけを後から追加する場合と比べ、実写側にも、その物体がそこにいることを感じさせる手がかりが残ります。ドローンが運んでいるのは、映像を撮るためのカメラだけではありません。映像の中に存在感をつくるための光源でもあるのです。


この使い方を考えると、撮影用ドローンの事業範囲はかなり広くなります。カメラの位置を変える仕事に加え、照明や視覚効果の設計にも関わる余地があります。



空撮事業者が売るものも変わる


ここからは、この事例がドローン事業に何を示しているのかを考えます。


日本の空撮事業者にとっても、機体名や撮影解像度は分かりやすい営業材料です。ただ、同じ機体が普及すると、そこだけでは違いを説明しにくくなります。


映画制作側が必要としているのは、ある数秒の映像です。その映像を、限られた時間と撮影条件の中で成立させることに価値があります。


例えば、監督が望むカメラの動きを聞き、機体の大きさや撮影場所に応じて方法を提案する。俳優、照明、スタント、撮影スタッフの動きを合わせる。必要な準備やリハーサルを組み、撮影後の仕上げまで見据える。こうした仕事をまとめて引き受けられるなら、制作側にとって頼む理由がはっきりします。


『ディスクロージャー・デイ』の事例から読み取れるのは、技術を見せることと、仕事をつくることの距離の近さです。撮影チームが使い方を提案し、監督がそれを見て次の場面を考える。現場での対話が、新しい用途を生んでいます。


これは点検や測量にも通じる話でしょう。顧客がドローンの使い方を決め切ってから依頼するとは限りません。業務を理解した事業者が、どの工程をどう変えられるかを具体的に示すことで、導入の理由が生まれます。


スピルバーグの撮影現場で広がったのは、「飛ぶカメラ」を使って実現できる表現と、それを支えるチームの仕事でした。


ドローンを使う側の想像力まで引き出せるか。空撮の次の仕事は、そこから始まるのだと思います。

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